人間国宝の手紙
人間国宝の岩野市兵衛氏は、和紙研究家の柳瀬眞氏へ次のような手紙を書いたことがあるそうです。それは恐らく先代岩野市兵衛氏のものだと思われます。
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《和紙の将来がどうなるのか、みんなが論議なさるが、長年、ただ一人で越前奉書を漉いてきた自分こそが、最も深刻に悩み抜いてきたところである。人間国宝になってからだって、紙漉きがこのまま続けられるか、どうか迷ったことがある。しかし結局は、武士のように最後まで戦って、倒れていくほかないのだ。》
明治二十八年の統計では、全国に手漉き和紙業者は六万二千件あった。終戦直後でも一万三千軒残っていた。しかし、昭和五十六年には五百九十九軒、五十九年にはとうとう五百軒を割ってしまったのである。一つのものが世に受け入れられず、滅ぶとしても、それが価値がない誤ったこととはならぬ、と柳瀬眞氏は述べている。今日の日本人は、和紙のよさを理解できなくなっているから、いい紙とよくない紙の区別ができない、とアメリカ人ロバート・シンガー氏はいう。世界に冠たる紙と誰もが認める和紙が、このまま滅ぶのを黙って見ていられない。
日本人の心の鏡のように、千三百年以上生き続けてきた和紙を、二十世紀の人々は滅ぼしてしまった、と歴史に語られたくない気持ちを、もっと多くの日本人が持つべきであろう。
(小林きょう一著 『紙の今昔』 新潮社)
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高野山中学校第29期生からメールをいただきました。

