高 野 紙 見 聞 録

昭和62年・63年 名匠 中坊佳世子さんが抄造する高野紙の記録
 高野紙の製法を弘法大師から教えられた、と里の人々は信じています。
  かつて高野山のお寺の経本などに用いられ、繁栄を誇ったのは、もう語り草‥ 
 ここに、またひとつ、美しい伝統が消え去ろうとしています。
  ひょっとすると、これが滅亡寸前の高野紙の最終リポートになるかもしれません。
 

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半流し漉きの発見

『高野山正智院伝来資料による中世和紙の調査研究』
宍倉佐敏、山本信吉 編著『高野山正智院伝来資料による中世和紙の調査研究』(2004年9月刊、特種製紙株式会社)を紹介する。

この調査研究は高野山正智院と、宍倉佐敏氏(元・特種製紙株式会社)および山本信吉氏(元・奈良国立博物館長)により平成11年から行なわれた。中世和紙の研究は、奈良時代(古代和紙)や江戸時代(近世和紙)のそれに比べ遅れていたが、今回、中世の古典籍・古文書の調査を通じてその実態が明らかになった。

成果を一口に言うと、「和紙が古代の溜め漉き技法から、近世の流し漉き技法に発展する過程の中で、半流し漉きと呼ぶべき技法が存在していたこと。その技法は我が国で典籍・文書の利用が進展するに伴って、それに適応できる和紙を作るため、工夫・開発された技法であり、それは厚紙から薄紙へという和紙の変化の過程を示しています。」(「ご挨拶」から引用)ということになるが、一章の「調査の概要とその成果」を元に、いま少し詳しく紹介したい。

高野山正智院伝来資料による中世和紙の調査研究





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寺院における紙の利用

 奈良興福寺で1088年(寛治二年)『成唯識論』全十巻が開版され、ついで奈良の春日神社を中心とする仏典開版(春日版、1095~1225)が隆盛であった。それに刺激されて、高野山(1251年以降)その他の地方でも仏書の開版が盛んにおこなわれた。それらの用紙はすべて楮を原料とした。そのうち、高野版の高野紙は萱簀で、簀目1センチにつき3~4の厚紙である。
(関義城著 『手漉紙史の研究』 木耳社 1976)


大日経疏巻第二(高野版)高野山 宝寿院 所蔵
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